本日は晴天なり。

空には千切れた雲達――こういうのはうろこ雲と言うのだろう――が流れる。

もう夏も終わりかけて、早朝ならではの少し冷えた風が私の髪を撫でる。


そんな中、私は着物独特の長いそで下を紐で括り上げると、竹で編んだ籠を持って、私が手入れを担当しているトマト畑へと向かった。














我ら伊達軍は周囲の敵国からは素行が悪い連中だとか罵られているけれど、実は農作業が趣味という意外な一面を持っている。

昔、自然を愛するものに悪いヤツはいないとか聞いた事がある気がする。

確かに伊達軍は見た目は一昔前のツッパリ(死語)というか、チンピラだけど根はいい人が多いと思う。

「ヨゥ、 !今日も精が出るな」

聞きなれた声に私は振り返る。

「あ、政宗さまァァァアアアアア?!!!」

私の背後には、首から下が畑の土の中に植わっている伊達政宗様の姿があった。





























なぜ、どうしてこんな事になってしまっているのか。

いちめんのとまとばたけ。
いちめんのとまとばたけ。
いちめんのとまとばたけ。
いちめんのとまとばたけ。
いちめんのとまとばたけ。
いちめんのとまとばたけ。
いちめんのとまとばたけ。
ひとりだけまさむねさま。
いちめんのとまとばたけ。

いちめんのとまとばたけ・・・・・

・・・・・これはもしかしたら政宗様の顔をした植物なのかもしれない。

だって自軍の大将が地面に首だけ出して埋まってるなんて事態、まずありえない。

一面のトマト畑に咲く、一輪の政宗様というべきか。

あーほら、一昔流行ったアレ。人面犬。この前だと人面魚だってゲームになったじゃないか。

いや、もしかしたらこの間発売された戦国BASARA2は農業シュミレーションゲーム・・・?



、何かお前面白い事考えてるよな。オレに言ってみ・・・ぶべらぼがぼら!!」

私は汲んであった水を勢いよくトマ宗様(トマト+政宗+様は敬意)にかけた。



























「戦国BASARA2は趣旨を変更して「農耕BASARA」になったのかと思いまして・・・水をあげないとな、って思い・・・その・・・すいませんでした」

トマ宗様改め、政宗様の前で正座をして平謝りをする私。

新種の植物かと思われた、否、思いたかったトマ宗様は政宗様本人で。

「・・・あの、政宗様は何をしていらっしゃるんですか・・・・・?」

「見りゃ分かんだろ、落とし穴にハマったんだ。出るの手伝え」

落とし穴にハマったというのに、この態度。

流石、奥州筆頭、伊達政宗といったところだろうか。

「はぁ・・・手伝いますけど・・・だいたい、こんな都合よく日本男子の平均身長を超えるに超えた大男がハマる穴なんてある訳ないじゃないですか」

「ホラよ、最近ウチの作物を荒らす輩が出ていたから誰か掘ったんじゃねーのか」

「だからって、いつ敵国が攻め入ってくるかわからない今の状態で、こんな深い穴を掘るような暇な人が居る訳・・・」

「フハハハハ!!こんな典型的なトラップにハマる馬鹿者が!!野郎共!!政宗園に侵入したドブネズミを後悔させてやれ!!」

『おおーーーーーー!!』

突如、私の背後の草むらから現れたのは政宗様の右腕の片倉小十郎様と。

伊達軍の兵士、約数十名程。

暇な人が、ここに居た。

しかも複数ときた。

「あ? じゃねーか」

「な、何してるんですか、小十郎様・・・」

「最近、お前の担当しているトマト畑が荒らされるって聞いてな。三日三晩寝ずに掘ってやったんだ」

我が伊達軍に畑荒らしなど言語道断だ、と何故か物凄く誇らしげな小十郎様。

「そ、そうなんですか・・・お心遣い感謝します、けど・・・・・先日は戦ではありませんでしたか・・・?」

「ああ、おかげで先日の戦では寝不足で死ぬかと思った」

「やっぱりか!!家庭菜園に全力投球しないで下さい!!命かかってるんですよ?!」

「なぁ、テメーらオレの事忘れてねーか」




















「それはそうと、政宗様はどうしてこんな早朝から畑へ?」

小十郎様と協力し、ほったらかしにされていた政宗様を穴から引きずり出すと。

兵士に呼ばれて小十郎様は隣の畑にモグラ退治へと行ってしまい、私は政宗様の体についた土を払いながら畑へ来た理由を尋ねた。

「お前の手入れしてる畑を荒らす輩がいるんだろ?だから、とっ捕まえてやろうと思ってここに来たんだよ」

「確かに畑を荒らされている事には頭を悩ませていますけど・・・でも政宗様のお手を煩わせる訳には・・・」



「オレの が襲われたりしねーか心配で見に来てるんだよ」



「そうですけど・・・・・・・・・・・・はい?」



想定外の返答に思わず聞き返してしまった。

聞こえなかったか?と私の顔を覗き込もうとする政宗様に対し、聞こえていますと大きく首を振ってみせた。

予想もしていなかった突然の言葉に顔が熱くなっているのが分かる。

「文句でもあるか?」

「いえ・・・な、ないです!」

私は赤くなっている顔を隠すように、少しだけ俯きながらそう言った。

、トマトみたいに顔赤いぞ」

そんな私の努力は無駄に終わったらしく、政宗様は私の顔の覗き込むと不敵に口元に笑みを浮かべてみせた。

「・・・放っておいてください!」



































―あとがき―

伊達さんは国際派なのに全く英語使ってなくてゴメンなさい・・・!口調が;;駅前留学して来なさい(私が)
というか、全体的にごめんなさい(土下座)でも愛は詰まっていますので・・・!