「暇だー・・・」

中庭のベンチに体を預け、仰向けに仰け反りながらルークがやる気のない声を発した。



「ルークの奴、怠けてるな」

「ヴァン謡将が任務に出ちゃってるからね」

その様子を物陰から見つめるファブレ公爵使用人、兼ルークの奉公人の俺と

「・・・・・そうだ!面白いこ・・・いや、いい事思いついたよ!」

「今、面白い事って・・・」

「気のせいだよ」















「ルーク。ゲームやろう」

がルークの目の前にトランプを出しながら言った。

「ゲームって・・・何のだよ」

突然の言葉に怪訝な顔をするルーク。


「王様カードゲーム」


「だから、何だよ、それ」

「本当は大人数の方がいいと思うけど、暇つぶし程度にさ」

「だったらナタリア連れてこればいいじゃねーか」

「ナタリア殿下も巻き込むとファブレ公爵家の存続の危機にたたされるので、残念ながら」

「どんな遊びなんだよ!!」

「取り敢えず3人でカードゲームでもしよう。それから説明するよ」










ルークの部屋に移り、カードゲーム定番であるババ抜きを始める。

結果は が一番で、次点がルーク、そして俺となった。


が一番乗りで、ガイがドベだな」

「はは・・・」

「で、どうするんだ?」

「えーとね、一番の私がドベのガイに何か命令できるの。だから王様カードゲーム」

「へぇ〜」

「じゃあ早速だけど、ガイに罰ゲームを・・・」

「今のは練習練習!次行こうぜ!次!」

「おう!次は七並べしようぜ!」

「ちょっと待てーーーー!!」





「上がり♪」

「うわっ!先越された・・・!」

次の七並べでは再び俺の勝利、あと一歩で勝利を逃した は悔しそうに表情を歪めた。

「ゲッ・・・!オレがドベかよ・・・!」

「じゃあルーク、これ宿題な」

勉強を進んでやらないルークに課した罰ゲームはフォニック文字の書き取りと計算問題集数冊。

「ゲッ・・・!」

「罰ゲームなんだから、ちゃんとやっておけよ」

「へいへい・・・」

「よーし!次は大富豪やろうよ」





「やった!大富豪!!」

次の歓喜の声は

「・・・革命使ったくせに」

苦渋の声を出したのは大貧民こと、俺。

「はいはい、大貧民のガイさん、罰ゲーム!メイドさんのスカート捲ってきて☆」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

何を言われたのか一瞬理解出来なくて、思わず聞き返した。

「だから、メイドさんのスカートめくり!真空破斬とか断空剣使ってもいいから!」

「お前なぁ・・・!俺が女性恐怖症だって事、知ってるだろ・・・」

「うん・・・だからさ、せめていい思いをさせながら克服を・・・・・」

鞘に収まっている剣を使い、淡々と説明を述べる のスカートを捲った。

「・・・って、待てコラ!!私のスカート捲れなんて言ってない!!」

顔を赤面させ、慌ててスカートを抑えた

だってメイドと似たようなもんだろ」

「〜〜〜〜あのね!!一応、使用人だっつの!!」

「どうでもいいけど、スパッツ穿くのは止めろよ」

「・・・何よ。自分だって似たようなもの穿いてるどころか、さらけ出してるクセに」

「何だと」

「おーい、痴話喧嘩してないで、次やろうぜ」

「「どこが痴話喧嘩だ!!」」





「よーし!オレが王様♪ドベは誰だっけ?」

その場でガッツポーズを取り喜ぶルーク。

「ガイ!」

「お前だろ!!」

!」

「な、何・・・?」

やけに嬉しそうな顔をするルークに、 は思わず顔を引きつらせる。

「ラムダスの頭を触りながら「2323(フサフサと読む)アートネーチャー♪」って言って来い!」

「はぁ?!嫌だよ!そんなラムダスの心の傷を抉るような真似!!」

「いや、もうこの時点でラムダスは立ち直れないくらいのダメージだって」

「罰ゲームは絶対なんだろ?やって来いよ」

「う・・・っ!・・・・・ 、い・・・行きます!」

はそう叫び、部屋を飛び出した。


その数分もしない内に、とてつもない轟音「ごめんなさい」「許して」「悪意はあるけど悪気はないんです」との声がここまで聞こえ、心の底で彼女に同情した。


やがて足音が近くなって来て、扉が思いっきり開かれた。

必死に逃げてきたのか、息を切らしながら眉を吊り上げて俺とルークを睨んだ。

「・・・絶対お前ら負かす・・・!負かしてみせる!!」





「イエス!一番乗り!!」

予告通り、 が一番に上がった。

「げっ・・・!」

危機感を覚え、早く上がろうと手札を見直すルーク。

「悪いな、ルーク。罰ゲーム頑張れよ」

だが、俺が上がる事によってそのルークの頑張りも無駄に終わった。

「げげっ・・・!」


「ふふふ・・・ルーク・・・もうすぐ晩御飯の時間だね・・・さっきのお礼に究極の罰ゲームをあげるよ」

はさっきの仕返しだと言わんばかりに口元を吊り上げる。

「な、何だよ・・・」


「私の格好して公爵と食事しなさい!!」


「はぁ?!!父上だけじゃなくて母上やメイドも居るんだぞ!!」

「ハプニング、ハプニング☆」

「ハプニングで済まされるか!!第一、オレがお前の着てる間、お前はどうするんだよ・・・!」

「あららのら。偶然、懐に換えの服が入ってる・・・!こんな偶然ってあるんだね」

まるでマジシャンが懐から万国旗を出すように、今着ている服と全く同じ服を出す

「何であるんだよ!!」

「ルーク覚悟!ガイ、手伝って!」

既にルークの服に手をかけ始める

「あ?ああ」

「ヲイ!コラ!!」

「悪いな、ルーク。罰ゲームだから、観念し・・・」


「ルーク様、失礼しま・・・」


ノック音と控えめなメイドの子の声が部屋に届いた。

「い、今入るな!!絶対入るな!!頼む!いや、お願いします!!」

これまでにない程に必死なルークの声がそれを制止させた。


「え?あ、はい?じゃあ用件だけお伝えします。今晩、ナタリア殿下がこちらで一緒にお食事をするそうです」


「最悪の展開!!」


「「最高の展開!!」」


「うるせー!!」


「で、では失礼します」










「ルーク、似合ってるよ!自信もって!」

は着替えをされ終わったルークに向かって親指を立てた。

「ナタリア様が来るなんて、最高・・・おおっと!最低の展開だね!」

「ドンマイ、ルーク」

ルークの肩を軽く叩く。

「絶対、お前ら楽しんでるだろ!!」

「ルーク!頑張れ!」

「楽しかったね!またやろう!」

「もう二度とするか!!!!!」

ルークは俺と にそう叫ぶと部屋を出て行った。










「ねぇねぇ、ガイ」

応接室の方に荒っぽく歩いていくルークを見送りながら が俺に声をかけた。

「何だ?」

「一番最初にやったゲーム、私まだ罰ゲーム言ってないんだけど?」

「あれは練習で・・・」

「ねー、いいじゃん!一つだけなんだから」

「う・・・・・女装とスカート捲り以外なら」

笑顔で詰め寄られ、つい無責任な言葉を返してしまった。

「やった!ふはははは・・・さっきは酷い目に会っちゃったからなぁ・・・どうしてくれよう・・・」

「ラ、ラムダスはルークだろ・・・?」

「うーん・・・・・まぁ、そうだけど・・・・・・・じゃあ」

暫く考え込んでいたようだが、何かを思いついたのか、顔を上げる。


「ガイにもし好きな人が出来たら、一番最初に教えてよ」


「へ?好きな人?」

「そう」

「・・・どうして?」

俺がそう尋ねると はみるみる顔を赤く染めていった。

「え?だ、だって―――」


『まぁ!!ルーク、何ですの?!!!その格好は!!!王族としての自覚はどうしたのですか!!!』


ナタリア様の金切り声が の言葉を遮った。

早くも手痛い突っ込みを受けるルークの姿が目に浮かぶ。

「・・・ナタリア様の雷が落ちたね・・・」

、今聞こえなかったんだけど・・・」

「えっ・・・と〜〜〜〜やっぱり秘密!」

そう言うと は俺から視線を背けた。



「好きな人を言えって・・・難題だな」



だって、好きな人は君なんだから



「?今、何か言った?」

「いいや。その前に女性恐怖症を治さないとな」

「?何かよく分かんないけど、そうだね」



「・・・それにしても、ルークの罰ゲームはやり過ぎだったんじゃないか・・・?」

「・・・ガイはラムダスの恐ろしさを知らないからそう言えるんだよ・・・」



ラムダスだけは下手に関わるのはよそう、そう心に決めた。


































―あとがき―

何か文章に無理がありすぎ(今始まった事ではない)