人は何かに依存しなければ生きてはいけない生き物だ。
依存
「ちょっと
。何飲んでんのヨ」
時は天地戦争時代。
私は地上軍の軍師として毎日忙しい日々を過ごしているワケで。
今日は久々に休みが取れたので、友人のハロルドと休日を私の部屋で過ごしている。
そこでハロルドが部屋の棚に置かれた錠剤の入った入れ物に目を留めた。
「何って、ビタミン剤」
忙しいあまり、不規則な生活をつい、続けてしまう私は、肌荒れの為、健康の為、ビタミン剤を服用している。
「他にもあるわよ。カルシウムとか・・・」
「アンタねぇ・・・いくら生活が乱れてるからって・・・」
ハロルドはため息をつきながら、棚を見つめた。
「乱れてるから飲んでんのヨ。やっぱ肌荒れとか怖いもの」
「あのねぇ・・・そもそも飲むくらいなら生活正しなさいよ。
お肌の敵の一人は寝不足なんだし。・・・・・つーかアンタってちゃんと寝てる?」
「んーん。今日久々に寝たわ。いやー疲れてると夢見なくなるのかしらねぇ〜ここ最近夢っての見てないわ」
「それは根本的に寝てないからでしょ」
「まーね。だから絶対ビタミン剤とかは手放せないね。つーか飲まないと不安だし」
「アンタ、それもう依存じゃない?」
その夜。
私が読みかけの本に目を通していた時、扉をノックする音が部屋に響いた。
「はーい。開いてますよー」
私がそう言うと、おかまいなしに堂々と入ってきたのはハロルドの双子の兄カーレル。
私とカーレルは同じ軍師という役職に就いているため、仲が良い。
「やぁ、
」
「カーレル。何の用?今日、私非番なハズなんだけど」
「別に仕事じゃないさ。仕事はさっき終わったし」
「じゃあ何だった?」
と、私が聞くと、カーレルは私の隣に腰をおとした。
「ハロルドから聞いたんだけど、かなり生活が乱れてるらしいね」
「・・・今に始まった事じゃないわ。気にしないで。戦争さえ終わればもとの生活に戻すつもりだし」
「いや、僕らはいずれ、天井軍との決戦で前衛に出る事になる人間だ。生活も、もちろん体の健康管理も大切な仕事だ」
「・・・で?」
「そこで考えたんだが、今日から
’s生活改善週間にしようと思うんだ!!」
皆が憧れる天才軍師様は、いつものスマイルで言い切った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうせハロルドが考えたんだろう。
「・・・・・無理。」
「いーや駄目。これは強制だよ。と、いう訳で。
君のビタミン剤を始めとする栄養剤は持って行かせていただくよ」
カーレルは手際よく、どこから出したのか、ふろしきに私の薬をしまっていく。
「あーーーー!!!ちょっと何してんのよ!!それなくなったら栄養バランスが悪くなる―――」
「そんなんは朝・昼・晩とキチンとバランスのとれた食事で何とかなるでしょう。
あ、あと
の部屋の照明は11時に落とさせてもらうから」
「はぁ?!今時、小学生でも11時になんて寝ないわよ!!」
「この時代には小学生はいませんので省きます。
とにかく、決定事項だから。今はもう10時47分だから、あと13分ほどで切れるから☆おやすみ」
「ちょっ・・・ちょっと待ちなさいよ!カーレル!!」
カーレルは、さっさと私の薬を持って出て行ってしまった。
「・・・どうせハッタリよね。さ、本の続き〜」
その13分後、彼の言っていたと通り私の部屋の照明は落とされた。
夜は11時消灯。
薬は一切飲めない。
私は早くも2日目で根をあげそうだった。
・・・そうとう依存してたのね、私。
「や、どうだい?
。健康生活は」
「死にそう」
私がそう言うとカーレルは楽しそうに笑った。
まさしく不愉快だ。
「・・・長いなぁ・・・そういうカーレル。アンタはどうなのよ?」
「何がかい?」
カーレルは今の私にとって、クソムカツク素晴らしい笑顔で聞き返した。
「アンタは健康生活送ってんの?私に健康生活だーとか言っておきながら、自分はIt’s不健康児だなんて言わせないわよ」
「ああ、僕は自慢でもないが不健康生活だよ?」
「はぁ?!じゃあ何で私にそんなに健康生活ってのを売るのよ!?」
「それは・・・」
「それは何?まさか嫌がらせ?」
「まさか!まあ、後5日頑張ってくれよ?」
「・・・・・・?変な奴・・・」
慣れて来たのか、3日、4日、日を重ねる度に、この生活はあまり苦痛にならなくなってきた。
それどころか、「最近顔色がいい」ってよく言われるようになった。
気づくと今日が最終日だった。
「どう?
。最近顔色が良くなったんじゃない?」
今日は私がハロルドの部屋に遊びに行ってます。
「ハロルド、私ってそんなに今まで顔色悪かった?」
「うん。今と比べるとずーっとね」
「そっかぁ・・・今回ばかりはハロルドに感謝しなきゃね」
「?なんで」
「え、だって、私の生活正そうって計画はハロルドが考えたんじゃないの?」
「違うわよ。私は兄貴に相談しただけ。この計画は兄貴が考えたのよ?」
「そうなの?」
「本当よ。私はアンタの部屋の照明を細工しただけだもの」
そう聞いた私はカーレルを探した。
「カーレル!」
「
?どうしたんだい?」
走って来た私を不思議そうに見るカーレル。
「今回の計画、カーレルが立てたって聞いて・・・
私、この生活始めてから、体の調子が前よりずっと良くってさ。だから、どうしてもお礼が言いたくて・・・」
「それはどうも」
「アンタのおかげで、薬物依存症は治ったみたい」
「・・・・・・・・
、知ってるかい?依存っていうのは、誰でもなってしまうものなんだよ」
「?うん、まぁ確かにね」
カーレルの口調が急にいつもより真面目になって、少し驚きつつも私は曖昧に返事を返す。
「僕はずっと前から
、君に依存していたんだよ」
「・・・それって・・・」
「君の事が好きだったんだ」
「・・・うん・・・ねぇ、カーレル。私、薬の依存は絶対止める。
だから、次は貴方に依存させて?」
「・・・ああ。頑張らせてもらうよ」
人は何かに依存しなければ生きてはいけない生き物だ。
でもね、それってつまり、何かを・・・誰かを頼らないと生きていけないことで・・・
やっぱり一人では生きてはいけないって事。
だから私は貴方に依存。
貴方も私に依存。
ね、カーレル。覚悟しておいてよね。