「・・・・・・」



夢を見た。

お茶屋さんへ行き、お団子を食べ、街へと出かける、なんてこともない夢。

それだけなら何の問題もないのだ。



あろう事か、その一連の行動は新撰組の沖田さんと一緒だったのだ。

その上、仲睦まじく手を握り、その様子はまるで逢引をしているようだった。






*****





お茶屋さんの腰掛けに座り、すいません、と声を張る。

数秒も待たずに返事と共に給仕の女の子が店の中から顔を出す。

給仕の女の子にお茶とお団子を頼むと、

「僕も同じの頂戴」

いつの間にか隣に座っていた沖田さんが飄々と顔を覗かせた。

私を驚かせようと、わざと気配を消していたのだ。

「・・・いつからいらしてたんですか?」

「たった今だよ。そういうちゃんこそ、いつ気がついてたの?」

沖田さんはさほど驚いていない私の様子に、僅かに残念そうな顔をする。

「まるで僕が来る事、知ってたみたいだ」

「夢で見たんですよ」

「夢?」

「沖田さんとお団子を食べる夢を見たんです」

「へぇ、予知夢ってやつ?」

「そうですね」

ふーん、と言いながら変わらずニヤニヤと笑う沖田さん。



ちゃん、そんなに僕とお団子が食べたかったんだ」



「だって、そうでしょ?ここで僕を待ってたんだから」

予知夢で知っていたのなら、会いたくなければ来ないよね、と沖田さんは意地の悪い笑みを浮かべる。

この笑みは自分が有利な立場の時の笑い方だ。

「なっ・・・」

「そうそう―――」

「夢って、願望の表れともいうよね」

何故、どうしてそういう発想が出てくるのだ。

思いもよらない発言に、悔しさと恥ずかしさに赤面して顔を俯かせた。

本人に予知夢の話をするなんて、とんだ失敗だったのだ。

「あれ?ちゃんどうしたの?」

わざとらしくおどけてみせる沖田さん。

だから私は沖田さんが苦手なのだ。

「もしかして図星?」

更に追い打ちをかけるように私の顔を覗きこむ。

「し、知りません!」

「ねぇ、その夢の続きってどうなるの?」

「教えません」

「ふーん、まぁ、いいけど」

お茶が冷めちゃうよ、と促され、一気にお団子とお茶を流し込む。

ちゃんの夢に従うつもりもないしね」

いつの間にお団子を食べきったのか、沖田さんは懐から二人分のお金を給仕の女の子に払う。

慌てて私もお金を払おうするが、それを制して私の手を取って立ちあがる。

「さ、行こうか」

「・・・私の夢に従うのは釈然としないんじゃないんですか」

「そうだけど、僕がちゃんと出かけたいからだよ」



そう言って沖田さんは私の手を引いて歩き出す。

そこで私は、これは正夢だったのだ、と気がついた。