ここはエルドラントの頭頂部。




私たちの前に立ちふさがった六神将も、ヴァンも倒した。




ルークがローレライを解放すれば、全てが終わる。












「ルーク」

も、早く避難しろよ」












ルークは私に隠しているつもりだけど、私は聞いてしまった。


レムの塔で瘴気を中和したルークは、今、体内の音素が乖離していて。


あの時ベルケンドに入院しても、しなくても。

ローレライを解放しても、しなくても。









消えてしまうんだって。

























頭に何かが置かれる感覚がして顔を上げた。

私の頭に置かれたのはルークの手。



「・・・7才児に頭撫でられた」

「う・・・身長は俺のが上だ」

「どうして?」










が泣きそうな顔してたから」










「・・・当たり前じゃない」

「安心しろよ。ローレライはちゃんと解放するし、お前も守ってやるから」




な?、と私を言い聞かせようとするルークの声は、私とは反対に明るくて。

でも、私の頭に置かれた手は、僅かに震えてて。





「・・・・・・・・まだ、7才でしょ・・・」

「え?」

「まだ、たった7年しか生きてないのに!どうして―――」










―――死なないといけないの?










私の言葉は、私の口から発せられる前に、ルークの腕の中に消えた。





「ありがとな、

「俺、たくさん人を殺したし、本当に最低の奴だった」

「そんな俺の為に泣いてくれて、ありがとう」





あやす様に背中を撫でてくれる手が、温かくて、涙が止まらなかった。

私の涙は床に落ちる事なく、ルークの服に淡い染みを作っていく。




















私を撫でる手はこんなに温かいのに。

ルークはこんなに温かいのに。





どうして、消えてしまうのだろう。





誰よりも変わろうと必死で。

誰よりも今を生きる事に必死で。





誰よりも、誰よりも、生きていて欲しいのに。










どうして彼が死ななくてはならないのでしょうか。




















「馬鹿だよ、ルーク」





瘴気なんか放っておいて、逃げればよかったのに。

どうせ預言なしじゃ生きれない人間ばかりのこの世界なんか。

どうせルークのいない世界なんか。

私には必要ない。





「ああ、馬鹿だよな、俺」

「でも、私はルークが―――」





私の体に回された腕の力が強くなった。

「ごめん。そっから先を聞いたら、俺、死ねなくなると思う」

「・・・死ぬなんて、言わないで」

「俺の為に、押し殺して」

「俺も、押し殺すから」

最期に私の頭を優しく撫でて




「じゃあな」




ルークは私に背を向けた。










どんなに手を伸ばしても、もう貴方には届かなくて。

死に行く貴方を引き止める言葉もなくて。










「・・・ルーク」










―――好きだよ










貴方に伝えたかった言葉は、貴方の為に押し殺して。










私も貴方に背を向けた。