ダアト教会の大聖堂の隅に腰を落ち着かせる私と六神将のシンク。
大聖堂だから大勢の人が居るようだけれど、このダアト教会の大聖堂は預言を読むレムの日以外は寂れた様子をみせる。
「あづい・・・」
活火山が近くにある影響からか、ダアトは他の大陸に比べると温度が若干高い。
普段は過ごしやすさを感じるけれど、今日は珍しく平均気温を上回っていて非常に暑い。
大聖堂なら涼しいと思い、教会内をうろついていたシンクを捕まえ、ここへ来たのだけれど、風が通らないため蒸し暑い。
見事失敗だという訳だ。
「五月蝿いな・・・仮面がない分、マシだと思って欲しいね」
蒸れるんだよ、とシンク。
「じゃあ、取れよ」
「安易に取れない理由、知ってるだろ」
シンクは仮面で表情が分からないから、主に口調で感情を読み取っている。
暑さのせいではないだろう、不愉快な口調で言い捨てた。
「・・・まぁね」
そのシンクに対し、少し悪いことを言ったと思いながら曖昧に笑ってみせた。
「ていうか、そんなに暑いなら髪を束ねればいいじゃないか」
「あ、そっか」
気づかなかったのか、と呆れた声を出すシンク。
そんなシンクをよそに、私は早速ヘアゴムを取り出し、少し高めの位置に髪を一つにまとめた。
「でも暑い事には変わんないなぁ・・・ねぇ、場所移動する?」
「
、ピアスあけたの?」
「え?うん」
質問した内容とは全く違う返答に一瞬だけ戸惑ったけれど、私はシンクの問いかけに答えた。
「ペリドットっていう天然石」
耳に付けている緑色の小さな石をシンクに指してみせる。
「ふーん。何か意味でもあるの?」
「知らない」
「は?天然石なんだから効果とかあるんでしょ」
「意味とか効果で選んでないもん」
「じゃあ、何でさ」
訳が分からない、といった調子で私を見やる。
「だって」
私はシンクの仮面に手をかけてゆっくりと外した。
「シンクの目の色に似てるでしょ」
私はそう言ってシンクの若草色の瞳を覗き込む。
「・・・導師の、だろ」
シンクは複雑な表情で顔を逸らす。
「シンクの目の色だから、この石を選んだんだよ。導師は関係ない」
導師のレプリカという事で、導師そのものに無意識にコンプレクッスを抱いているシンクに導師を連想させる事はシンクにはタブーだという事は分かっている。
けれど、私が見ているのは導師ではなく、シンク自身だという事を伝えたかった。
「シンク色とかどう?」
「何それ」
少しは伝わってくれたのか、シンクは溜息をつきつつも少しだけ微笑んでくれた。