拝啓 お父様、お母様




〜どうした〜飲まないのか〜」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いえ、結構です」

「結構?なーにが結構なんだよ〜」

「・・・どうでもいいけど、お酒臭いよ、ルーク」

「あ"あ"?・・・聞こえねーよ・・・」

「酒臭いっつってんだろーが、この酔っ払い!!!」

「あははははは!ルーク怒られてる〜あははははははは!!」

「アニスも!」

「ひっく・・・ぐす・・・」

「ナ・・・ナタリア・・・?」

「アッシュ・・・何処にいらっしゃるの・・・ひっく・・・うぅ・・・!!」

「ナタリア、泣かないでよ〜」

「あはははははは! が泣かした〜きゃははははは!!」

「すー・・・すー・・・」

「・・・ティアは寝ちゃってるし・・・ナタリアは泣くし、アニスはパー子笑いするし・・・あーもー!!」




この世は、いえ、この場は混沌に満ちています。
















遡る事、数時間前



「なぁ、ジェイド何処行ったか知らないか?」

「大佐なら酒場に行ったよ〜」

ルークにアニスが答えた。

「酒場ぁ?」

「旦那はよく酒場に飲みに行ってるぞ」

「へぇ〜気が付かなかった」


「気が付きませんでした?」


「ジェイド?!」

唐突に現れたジェイドに驚倒するルーク。

「・・・?何だ?それ」

ジェイドの足元に置かれている箱に対してルークがジェイドに尋ねた。

「わ!凄い量のお酒!」

勝手に箱を開け、中身を確認したアニスは声を上げた。

「どうしたんだよ、これ」

「まさか・・・」

恐喝、強盗、盗難、と犯罪のオンパレードが脳裏を駆け巡る。

「少なくとも の期待している事ではありませんから」

「じゃあ、何?」

「酒場で暴れる馬鹿な輩が居たので、ミスティックゲージを使って追っ払ったんです。そうしたら気分をよくした店主がくれたんですよ」

「そんなゴロツキ相手に秘奥義使ったのかよ?!」

「私も少し酔いが回ってたんでしょうね。ちょっとムカッとイラッとしまして」



それ、店主さんへの遠まわしの恐喝だよ・・・



ジェイド以外のメンバーの心が一つになった瞬間だった。

「・・・今、絶対ジェイドを怒らすなよ」

「どうしたんです?ルーク。言いたい事はハッキリ言ってもいいんですよ」

「いやっ!別に言いたい事じゃないから!」



「でも、困りましたね」

「へ?」

「こんなに貰っても飲みきれないですからね」

「成人しているのはジェイドとガイだけだもんね」

私がそう言うと、その通りです、とジェイドが言った。

「大佐〜私たちも、たまにはいいじゃないですかぁ」

「駄目ですわ、アニス」

「そうよ。お酒は成人してから」

ナタリアとティアに止められ、アニスは、ぶーぶー、などと文句を言う。

「あ!だったらアレ!ビールかけやろうよ!!」

「ビールじゃなくてほとんどワインなんですけどね」

「つーか何に優勝したんだよ・・・」

「ジェイドの・・・毛刈り隊討伐記念・・・?」

「今、ここで討伐してもいいんですよ。あなた達を」

「冗談です」

「とにかく、これは返してきます。ジュースも少しあるみたいですから、それで我慢して下さい」

ジェイドは大量にある酒の中からジュースらしき瓶を数本出した。

「は〜い」

「残りの酒は返してきます。ガイ!荷物持ち!」

「俺が持ってくのか?!」

「未成年に酒場まで付き合わす訳にはいかないでしょう」

自分で持っていけよ、と言いたくても言えないガイは渋々と箱を持ち上げた。

「行ってらっしゃ〜い」



「あーあ。仕方ない。ジュースで我慢しますか〜」

「ジュースだけだと物足りないだろうから、果物でも切ってくるよ」

「やった〜」

「先に少し飲んでていいから」

「悪いわね」

ティアに、別にいいよ、と返し部屋を出た。




















そして、今に至る。


ティアは下戸で、アニスは笑い上戸、ナタリアは泣き上戸ときて、ルークに至ってはタチの悪い酔っ払いだ。


!聞いて下さいまし・・・!」

「うぉう?!」

突然、矢が顔のすぐ隣をかすった。

「な、ななな何かな?ナタリア・・・」

「どうしてアッシュは私達と行動を共にしてくれないのだと思います・・・?」

ナタリアは弓矢を構えながら私に問いつめる。

「え・・・さ、さぁ・・・?」

「私・・・アッシュに何かしたのかもしれませんわ・・・うっ・・・ひっく・・・」

「きゃははははは!!ナタリアが泣いてる〜げへっげへへへへへ」

泣き崩れてしまったナタリアの周りをアニスが笑いながら走りまわる。

「アニス!ナタリアを刺激するような事は言わないの!そしてその笑い方やめなさい!!つーか、こっちが泣きたいわ!」

「だぁって、笑いが止まんないんだも〜ん・・・あへへへへ〜」



「あーあ・・・この瓶も、あの瓶も・・・よく見たらお酒じゃん」

辺りに散乱している瓶を拾い上げ、中身を確認していく。

ジェイドも少しお酒が入ってようだから、間違えたのだろう。

「・・・・・ていうか、ティアやナタリアもお酒に弱いとは思わなかったなぁ・・・」

ティアは相変わらず眠ったままで、泣きつかれたナタリアは今、ティアの隣で夢の中。

アニスは笑いながらトクナガを振り回している。


〜何ブツブツ言ってんだよ〜」


ルークはそう言って私の肩に手をかけると、もう片方の手に握られた酒の入った瓶をラッパ飲みをした。

「ルーク!お酒はもうお終い!」

私はルークの手から瓶を奪い取った。

「・・・何でだよ」

「何でも!!一気飲みは体に悪いし、第一、未成年でしょ!」

ルークが成人しても、お酒は飲ませない方が無難だろうけど。

「あ"〜?る●うに剣心の●之助は未成年だけど飲んでたじゃねーか〜」

「明治浪漫譚の話はいいの!」

「だから酒返せ〜」

「ちょっ!臭ッ!ルーク酒臭ッ!半径2メートル以内に近づかないでよ!!」

「酒返したら考えてや「あははははは〜!ルーク、おしくらまんじゅうやろ〜」

 

プチ

 

「ぎゃぁああああ!!ルークーーーーー!!!?」

一方的過ぎるおしくらまんじゅう、否、トクナガに乗ったアニスはルークの上に落下した。

さり気ない効果音が恐ろしい。

「おっしくらまんじゅう♪おっされって泣くな♪」

さらにルークの上で暴れまわるアニス・タトリン奏長(13)。正しくはトクナガ。

「おっしく〜らまんじゅう♪押されて「泣くわ!!アニス!!それ以上止めて!!ルークが泣けない体になる!!!」

「あははは〜泣く人違うし〜・・・う〜〜・・・何かすっごく眠い・・・おやすみなさい・・・」

アニスの意識が途切れたと同時にトクナガはいつものサイズに戻り、ぐったりとした赤毛が姿を見せた。

「ルーク、大丈夫?!」

「・・・今、巨大なマシュマロが降ってくる白昼夢を見たんだぜ・・・はは・・・おかしいよな」

「ああ、お前おかしいよ!それリアルに起こった出来事なんだよ!!」

「オレ、今なら空飛べる気がする・・・」

「飛ぶな!!」

「オーストラリア行きてぇ・・・」

「ルーク?!助けて・・・誰か・・・助けて下さい!!!」

背景で平井●が「瞳をとじて」を歌っているような気がした。

 

 


「ただいま・・・って・・・何だ?この状況は・・・?」


ジェイドのパシリから開放されて帰って来たガイは部屋の惨状を見て目を白黒させた。

「ガイ!!集気法かけて!!」

、何が起こったんだ・・・?」

「ジェイドが置いていったジュースにお酒が入ってた・・・っぽい。私は席を外してたから、分かんないんだけど・・・」

「マジかよ・・・」

「ティアは寝ちゃうし、ナタリアは泣き上戸で泣き疲れたら寝るし、アニスはトクナガ虐めながら笑いまくってるし・・・・・・って、あれ?ジェイドは?」

「旦那は酒場で飲みなおしてるよ」

「あの野郎・・・」


〜」


「へぶっ!!」

突然ルークに背中から体当たりをされ、床に激突した。

「おい、ルーク!何やってんだ」

「ルークーーー!!!てめっ!真面目にブッ殺す!!」

「・・・・・・」

「・・・ルーク?」

「・・・・・・・・・・眠い」

ルークは私の腰にしがみついて、一言呟いた。

「・・・・・」

「ま、まぁ・・・ ・・・怒りはルークの酔いが醒めるまでとっておこう・・・な?」

「・・・・・そうする」

「ほら、ルーク。眠いんだったら寝室に移動するぞ」

「・・・ がいい」

「あのなぁ、ルーク・・・我が儘言うなって」

「・・・・・ヤダ」

「・・・ルークは私が連れてくよ」

「ちょっ・・・!じゃあティア達は・・・?!」

「当然、ガイが起こすか運ぶかしてよ」

「あのなぁ・・・俺は女性恐怖症で・・・」

「知ってるって。訓練、訓練!頑張って!」


「待て! !か・・・勘弁してくれーーーーー!!」


今日はガイにとっての厄日だなぁ、と心の中で合掌した。















「はい、水」

部屋に連れてきたルークをベッドに座らせ、水を差し出した。

「ヤダ」

「ヤダじゃないでしょ」

「・・・水はいい」

「飲んだ方がスッキリするよ」

「別にいい・・・」

ルークはそう言うと、また私の腰にしがみついた。

「あ、ルークは絡み上戸なのかも・・・じゃなくて、ルーク!」

水の入ったコップをサイドテーブルに置くと、ルークに向かって少し怒鳴るように言った。

「・・・・・ 、ガイとばっかり仲良くする・・・」

「・・・へ?」

「・・・オレだって の事、大好きだからな〜・・・」

「ちょっ・・・ルーク?!」

途端、世界が反転した。

というのは、ルークが私にしがみついたままベッドに沈んだため、私も巻き込まれたからだ。

「・・・もしもーし。ルークさーん」

「・・・・・・・・・・ぐー・・・」

「・・・寝てる」

散々人を巻き込んだ張本人は、ぐっすりと寝息をたてて眠ってしまっている。

「あー・・・何か、疲れた・・・・・」


「私も、ルークが大好きだよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・明日それなりの報復はするけどな」


溜息をついて暫くその寝顔を拝む事にした。






















「いってー!頭がガンガンす・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ん・・・?あ、ルーク、おはよう」

ルークの声で目が覚め、体を起こして思いっきり伸びた。

結局あのまま一晩寝過ごしてしまったようで、空はすっかり明るくなっていた。

「・・・・・・・・・・・・・」

私を見たまま固まるルーク。

「?どうかした?」

「な、何で が・・・ で・・・オレの隣で・・・?!」

「・・・覚えてないの?」

「ジェイドが酒になって、そのっ!酔っ払いを持って来て追い払った辺りは・・・」

「ルーク、混乱しておかしくなってるから」

ジェイドが酔っ払いを追っ払って、酒を持って来た。じゃないの?と尋ねた。

「あー・・・そうだけど・・・って、どうして がオレの隣で寝てるんだよ?!」

「・・・・・そんな事、私の口から言わすの・・・?」

「・・・!!」

私がそう言うと、ルークは顔を真っ赤にさせ、口をパクパクさせた。




本当は何もなかったんだけど。

昨日のささやかな復讐。

と、一握りのイタズラ心。




「え・・・オレ何も覚えてない・・・っていうか・・・えーーー?!!!」




一人百面相をするルーク。

面白いから、もう暫くこのままにしておこう。



































―あとがき―

王道な酒ネタを書いてみたかったんです・・・!